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持てる者、持たざる者

書きたいエントリが山のようにありながら、言葉にすることが難しく四苦八苦している。

毎年この時期、私は不安定になる。
ここ数日は、人が多い場所を通るのが嫌で、ひたすら家にいる。

そう、明日は成人の日。
綺麗な振袖を着た若いお嬢さん、スーツだったり服装はいろいろだけれど若い男の人ももちろん―たくさん見かける日。

見るのは辛い。
手に入らなかったもの、だから。
服装だけでなく写真でもなく、そういったものが象徴するもの、が手に入らなかったということをまのあたりにされるから。

でも、よかったね、とも思う。
あなたたちは、愛されているよ、と。幸せでいることを羨みながらも、よかったね、と思う。そのまま幸せでいてほしい。
もちろん複雑な事情がある人もいるのだろうけれど、きれいに振袖を着て、ヘアスタイルを整え、なじみの友人たちと盛り上がっている人たちは、きっと愛されている環境の人が多いのだろう。

誰もお祝いしようとしてくれないのに、あえて全て自力で手配し、実際にしたよ、という人は、私の知っているごく狭い範囲の話になるが―いない。


それまでもずっと
「誰のおかげで食べられると思ってる」「誰のおかげで学校に行けると思っている」
「小学生でも新聞配達している子だっているんだ」「中学を出て働いている人だっているんだぞ」
と言われ続けていた。

これは「お前なんかの為に」という意味を含むので、絶対にこどもに対して言ってはいけない言葉だ。
こどもをつくったのは親の考えでおこなったことであり、きょうだいをつくったのも自分たちであり、こどもを養うにはお金がかかるのが当たり前だ。
こどもは自分はいてはいけない存在なのかと、ひどく自己肯定感が低く育つ。


決して贅沢はできなかったけれど、
(たぶん収入としては一般より多い家庭だったと思うが、なにしろ一人で稼いだつもりで一人であぶくのようにお金を使う人が私の父親だった)
それでも、人並みの生活はさせてもらっていた。物理的に、という意味だけれど。
ただ、私はひたすら我慢し、手間もお金もかけさせてはならないということをひたすら考えていたので、ほかのきょうだいに比べて簡単に必要なものを親に言えない子だった。多くの子が親に送り迎えしてもらう場合でも、二時間くらいなら地図を見て、歩いて行っていたり帰っていた。
それでも、傍目からすると、周囲の友達と大きく差をとるようなことはなかった。そのかげには私のたったひとりの努力と忍耐があったのだけれど(そして忍耐しているという自覚さえなかった)。
それは確かに恵まれていたと感謝すべきことなのかもしれない。


でも、自分にはないのだ、ほかの人がもっているものをもたないのだ、
ということを、はっきりとした形で突きつけられたのが、
成人式というイベントだった。

うえのきょうだいのときは、親たちは張り切ってずっとずっと前からいろんな情報を集め、振袖をあつらえ、写真を撮り、それをあちこちの親類に配っていた。

自分にもそうしてもらえると思っていた私はきっと甘かったのだろう。
自分も同じように愛されていると―そう信じたかっただけなのかもしれない。

ひとり、自分の親にも他のきょうだいにも気を遣い、家事をこなす私は、きっといつのまにか、「家族」からいちだん低い存在になっていたのだろう。
「お手伝いさん」であり、「言うことをきく便利な存在」であり、軽んじても不満を持たない存在、となっていたのだろう。そして、言うことをきかないということは許されないということに自然とつながっていっていたのだろう。

私の気持ちを大切にされたことなど、なかった。
今も、ない。


うちのなかできつい思いをしていることは限られた友人にそれでも簡潔にしか言えていなかった。暗い話題だから。
それでも物理的に何か自分だけないものはなかったので(お小遣いから出していたものも多いが)高校までは同級生とこんなにも差があると思っていなかった。
だが、いざ家から離れて暮らしてみると―私がどうやって暮らしているのかさえも興味がないようだし、帰省してもひたすら働かされる。ひとりだけ。
不満なら帰ってくるなと言われ、出て行くと今度は激怒する。

離れることで自分の世界をそれなりにつくることもできていたし、やはり家はおかしいのだという思いを強めつつあったし、おかしな家族に、どんどんとうんざりしていっていた。

帰省して家族と過ごす時間を楽しんでいる友人たちを見て、ああ自分は違うのだ、と悲しく思っていた。

それでも、そういうめにあわされるとは予想外で、うちのめされた。
そうか、誰も私の成人式なんて気にかけていない。

これが、持てる者と持たざる者の差を大きく痛感した、初めての出来事だった。
その衝撃は大きかった。

自分にはないのだ、愛してくれる存在というものが。気にかけてくれる存在というものが。

これを認めるのはとてもきついことだった。


では、
ないのならば、つくっていくしかない。
人は一人では生きてはいけない。
必要なものを必要と、ほしいものをほしいと、認識する。
最近になってようやくそう思うようになった。

結局は離れていく存在であっても、そういう運命だったのかと、結局はかなわないのかと嘆きながら、失いつつも、そのときは助けられたのだからと感謝の思いで憎むことはできない。

憎んだことももちろんあるけれど―憎むというのはエネルギーがいることだ。
許せない、悲しい、弱い自分を許すことで、楽になれる。

被害に遭うことで、それまで直面しなくて済んだ問題、被害に遭わなければここまでつまびらかにならなかった問題が大きく浮上し、荒波となって、うねりとなって襲いかかる。


私からは話を聞こうとせず、あろうことか勝手な嘘ばかりの情報を信じ、加害者の親族、加害者の弁護士から聞かされることを信じ、私を罵り。
「迷惑」「恥ずかしい」と叫ぶ。
私が少し前にあげたほんのわずかなプレゼント、それを見つけるのに苦労したのに、平気で突き返し送り返されたときには、ただ涙しか出なかった。それもほんの少し。心がとても乾いていて、たくさん泣くこともできなかった。

おそらく被害に遭わなくても、何らかの形で衝突はしただろう。その素地はじゅうぶんにあった。
だが、ここまでひどい形では、弱っている人を、崖のふちをさまよっている状態の人を、
まさか家族がさらに崖から突き落とすような真似をするとは、予想もつかないことだった。
ほんとうに助けてほしかったときに、助けてもらえなかった。絶縁された。


なんどもなんども、失ったものを嘆く作業をした。
さんざんグリーフワークをした。
するたびに回復したという自覚はあった。
それでも。
この時期はつらい。

被害に遭った時期の記念日反応もつらいが、こっちもつらい。
失ったもの、いや、もともと持たなかったもの、それが、家族からの愛情。
それを、持っている人たちとの差を、再度感じる日。
若者たちの幸福そうな笑顔と、それを祝う大人たちの笑顔。
それがあふれる一日。

きっと私には永遠に手に入らない、家族からの愛情。


もう裏切られるのはいやだと思いながら、今日ひとりで過ごしていることの意味を考える。
やはりこの人との生活ももう駄目なのかと。
私はどうやってもひとりなのだと。

人間はしょせんひとり。
それはわかっているつもりであっても、いざつきつけられると。
そしてそれがこの時期だと、とてもつらい。とても示唆的だ。

今日は泣こう。たくさん泣こう。





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    二次被害三次被害等、過酷な経験をし、性被害の後遺症もところどころありますが、それでも、わたしは生きています。今は、生きていてよかったと思います。

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