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性暴力被害者の行動及び心理状態について

「性暴力被害者の行動及び心理状態について」

こちらも資料として置いておきます。
同じものを別館にもあげておきます。別館の記事はこちら→http://d.hatena.ne.jp/manysided/20101031/1288505451

※管理人と友好関係にない人、性暴力に理解のない人は、別館へどうぞ。




秋田セクシュアルハラスメント 二審にて提出され、裁判所の判決に採用された、
フェミニストカウンセラー河野貴代美氏の鑑定意見書

「セクハラ神話はもういらない 秋田セクシュアルハラスメント裁判 」p189~192より引用

3 性暴力被害者の行動及び心理状態について

(1) 日本では、性暴力被害者の行動及び心理状態に関して、これまで全く知られておらず、関心も払われてきませんでした。最近になってようやく被害者が自らを開示し、現実に何が行われたか、またどのような心理状態にいたかを少しずつ話し始めました。このような実態は、ほとんど当事者にしかわからず、体験そのものの特殊性を考えた時、これは当然のことと思えます。前記1で、被害者の回復にフェミニズムの視点が必要だと述べたのは、自分を責める傾向を持つ被害者に、フェミニズムの視点に立つことによって「あなたが悪いのではない」というメッセージを送ることができるからです。それゆえ、彼女等もフェミニストカウンセラーに対して自らを語り始めたのでした。通底する共通性(後述)はあるものの、行動や心理状態は、事件の内容、その時の状況、個人性によってかなりの違いを見せます。にもかかわらず、被害者の反応(たとえば本判決にいうところの「大声を上げて逃げる」)等については、きわめて通俗的なワンパターンの考え方が形成され、それらがあたかも普遍的な真実のように流通しております。これはまさしく非当事者が作り上げた「神話」です。

(2) まず、被害にあった時の反応は、一言で言えば「何が起きているかわからない」という言葉に集約されます。カウンセラーとして私が聞いてきた被害者の多くもこのように述べています。本件の控訴人Aは「もし、『これからセクハラしますよ。』と前もって言われたなら、NOと言ったでしょう。でも、」いきなり全く予期しない事をしかけられるわけだから、どう反応していいかわからない」と述べています。この非常に単純な言説に、あまりにも単純であるがゆえの見落とされがちな真実が含まれています。その他被害者は、「びっくりする」「オロオロドキドキする」「血が逆流する」「金縛りにあったような」「頭が真っ白になり何がなんだかわからない」などと述べております。このような心理は予期せぬ事態にあった時の一般的な反応として十分に説得力を持っています。
 「何が起きているかわからない」時、人はすぐに次の行動には移れないのです。パッと反応する(例えば「ノー」といったり、相手を押し戻したりする)ことができるという予測は、人が驚愕した時の反応としてまことに不適切だと言わざるをえません。もちろんなかには、反抗や反発ないしは何とか止めさせるためのあらゆる行為をする女性もいるでしょう。しかし、このような反抗や反発をする女性がいるという現実をすべての女性の現実に普遍化するのは誤りで、ましてやこれをもって性暴力(セクシュアル・ハラスメント)の存在そのものを否定するのは、女性の現実を全く無視するものです。


(3) 性暴力の被害にあった女性がどのように行動するか、アメリカの研究を紹介しましょう。

 以下では、強姦の被害者の対処行動について述べることとします。
 アメリカの研究者(A.W.Bugess, L.L.Holmstrom, Coping Behavior of the Rape Victim, Am J Psychiatry 133:4)は、強姦被害者の対処行動を、Ⅰ強姦の脅迫期、Ⅱ強姦期、Ⅲ強姦直後期、の三期に分け、92人の強姦の被害者の対処行動を分析しています。
 Ⅰ期に関する被害者の対処行動は、何の戦略も用いなかった被害者34人、何らかの戦略を用いた被害者58人でした。
 戦略を用いなかった被害者のうち二人は身体的麻痺状態、12人は心理的麻痺状態でした。
 戦略を用いた被害者の戦略を分析すると(複数回答)、認識的戦略にとどまった人18人、言語的戦略を用いた人57人、身体的抵抗をした人21人でした。
 認識的戦略とは、その状況に対してとることの可能な選択肢について頭の中で考えをめぐらせ、決定することです。例えば、どうやって攻撃者の手中から、あるいは車や部屋の中から、安全に逃れることができるかについて、考えをめぐらせたり、パニック状態になった男がさらに加害を加えてくることを恐れて、どうやって落ち着かせようかと考えることです。
 言語的戦略とは、その状況から逃れるために、加害者と「どこの学校に行っているの?」等、会話を続けようとしたり、加害者の気持ちを変えるための説得として、「私は結婚しているのよ」と言ってみたり、「主人がじき戻って来るわ」と、加害者を脅そうとしたり、お世辞を使って「あなたは素敵な男だわ、あなたならセックスのためにこんなことをする必要なんてないと思う」と言ったり、言語上攻撃的に「触らないで」と言ったりする等です。
 身体的抵抗とは、その状況から逃れると、あるいは攻撃者を脅かすことによって、強姦を防ごうと直接的な行動をすること(たとえば、ガラスの破片で男を刺そうとする、アパートの外かへ男を押し出そうとする等)です。
 Ⅱ期には認識的戦略28人、感情的反応25人(泣く17人、怒り8人)、言語的戦略23人(金切り声を上げる14人、話をする9人)、身体的行動23人、心理的防衛17人、生理的反応(失神、嘔吐など)10人、戦略なし1人、不明8人(総数90人)でした。
 認識的戦略では被害者はしばしば現実の出来事から精神を切り離し、事態に関係のない別な考えに精神的注意を集中させることによって対処し、生き延びることだけに焦点をあてます。加害者の暴力をエスカレートさせないために、被害者が特に精神的に自制して平静さを保つことは一つの戦略であった、とこの研究者は解説しています。
 言語的戦略には、金切り声を上げるというものと、加害者と話をするというものがあります。
 身体的防衛は、格闘する等ですが、被害者が抗い抵抗することがまさに加害者の望むところであり、それによって加害者がいっそう、興奮する場合のあることを知る必要があります。心理的防衛とは、耐え難い感情を遮断するために、認知領野を閉ざすことです。たとえば、ある女性は「こんなことが私に起こっているはずがない」と強姦されていることを否認し、ある女性は「私は本物の自分ではない」と分裂感情を経験しています。
 以上は、強姦の場合についての分析ですが、強制猥褻等、同じ性的侵害行為を受けた被害者の対処行動も、程度の差こそあれ、同様に考えることができます。

(4) ところで、なぜ、被害の実態に反するにもかかわらず、前述のようなワンパターンの「神話的」反応が流通してしまっているのでしょうか。それは、女性の存在が男性によって規定されてきたという事実に尽きると思います。ボーボワールは、『第二の性』(決定版『第二の性』新潮社)で、「女とは何か」という根源的な問いをたてそれに明確に「女とは他者にされたもの」と答えています。つまり、男たちから、社会から女は「こうだ」と言われ、女性もそれを受け入れてきた長い歴史があります。しかし、これが、本来の自己=女性の現実や実感から遠いイデオロギーになってしまっていることに女性たちが気づき「自分とは誰?何者?」と問い始めたのが1960年代後半のフェミニズムの運動です。女性たちは、他者に規定されない、異なった欲求、感情、行動パターンを持つ種々の女性の存在を主張しております。
 女性を規定するなかでも精神分析の創始者フロイトの影響は大きいと言わざるをえません。彼はギリシャ語の子宮を意味する「ヒステリー」という症状概念を作り、困難な事態に直面すると突然失神する女性を研究対象にしてきました。フロイトは(と共に社会も)「ヒステリー発作」に関して二重のメッセージを送っています。一つは、状態像は「病気である」というもの。もう一つは、にもかかわらず、ヒステリーや心気症(ヒコポンデリー)は「女らしさ」というパーソナリティに十分に組み込まれていて、場合や事情によって、突然倒れるのは、より「女らしい」とされるという事実です。まことに女性イメージは勝手な憶測や定義のなかで浮遊し、たくさんの「神話」がまかり通ってきました。







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<2011.7.18追記>
平成9年10月~10年1月末までに全国の警察署で取り扱った強姦及び強制わいせつ事件について、科学警察研究所の防犯少年部付主任研究員の内山絢子が行った調査

被害者の被害時の対処行動では、「大声で助けを求めた」41.7%、「付近の民家や店に駆け込む」6.4%「やめてくれと加害者に頼む」51.5%、「何もできなかった」25.5%

(「性犯罪の被害者の被害実態と加害者の社会的背景」内山絢子 『警察時報』No.11、2000 年)
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レイプ・シールド法(強姦被害者保護法)について

「レイプ・シールド法」について、資料としてこちらに置いておく。

別館にも同じものを上げておきます。
別館の記事はこちら→http://d.hatena.ne.jp/manysided/20101028/1288259834
こちらの本館は、性暴力に理解のある方と管理人と友好関係にある方に限定させていただいています。





「司法におけるジェンダー・バイアス」
第二東京弁護士会司法改革推進二弁本部ジェンダー部会 
司法におけるジェンダー問題諮問会議 編

p261~262より引用


コラム 

レイプ・シールド法(強姦被害者保護法)
    小倉京子/宮園久栄



 アメリカおよびカナダには、「レイプ・シールド・ロー(Rape shield law)」という通称で呼ばれる証拠法がある。それは、性暴力の被害者が訴訟で不利益を受けることを防止する目的で制定された、「強姦被害者保護法」というべき法律である。

 これらは、連邦や州によってその内容や適用範囲(刑事訴訟だけか、民事訴訟も含むか)について違いはあるものの、以下の点でほぼ共通している。すなわち、

(1)被害者が当該性行為以外の性的行為に関わっていること
(2)被害者の過去の性的経験に関する事実についての証拠は排除されるというものである。ただし、以下の場合は除外される。

①精子、傷害その他の物的証拠の主体が被告人ないし被告ではないことを立証趣旨とする場合の被害者ないし原告の具体的な性行為に関する証拠
②被害者ないし原告の合意が争点の場合に、被害者ないし原告と被告人ないし被告との具体的性的行為に関する証拠

 なぜ、こうした規定を設けたか。その理由として、以下のような弊害の防止を挙げている。

 第1に、本来、被害者が過去においてどのような性的経験を有するかは、当該具体的な性行為についての「同意」、あるいは、被害者の供述の「信用性」ともなんら関連性はない。被害者の他の性的行為や性的経験についての証拠に証拠能力を認めることは事実判断を誤らせる危険性がある。また、法廷の場においてそれらを問題とすることは、不必要に被害者のプライバシーを侵害するおそれがある。

 第2に、被害者の性行動や過去の性経験に関する証拠を捜査の過程で収集したり、裁判で公開したりすることは、法廷が被害者の性行や行状を裁く場となりかねず、被害者に無用の羞恥心を抱かせ、さらに被害者が周囲からステレオタイプ的なレッテルを貼られる可能性も大きい。これらの行為が許容されると、被害者が告訴をためらって法的救済が受けられなくなるばかりか、結果として性暴力という違法行為と行為者が放置されることになる。

 この法律が制定されるまで、性暴力事件において、被害者が加害者との性交に「同意」していた証拠として、被害者の過去の性経験が提出されるというケースがしばしば見られた。加害者のそうした戦術は、被害者に法廷で多大な屈辱を与え、また被害者が告訴することを妨げる原因ともなってきた。
 
 そもそもなぜ、従来、当該事件とは関係のない被害者の過去における性経験が問題とされてきたのだろうか。また、加害者に関しては、以前の性的暴行の有罪判決への言及は許されないのに対して、なぜ、被害者に関しては過去の性経験が問題とされるのか。それらは「貞操でない女性は、性行為に同意しやすい」とか「貞操でない女性の供述は信用できない」という強姦に関する誤った「神話」に基づいているのではないか。
 
 レイプ・シールド法は、まさにこうした批判を受け、被害者の声に耳を傾けた結果成立した法なのである。




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(2003/11/06)
第二東京弁護士会司法改革推進二弁本部ジェンダー部会司法におけるジェンダー問題諮問会議

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    ※ こちらは性暴力被害当事者、性暴力に理解のある方、管理人と友好関係にある方向けです。   
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    ※ 引用する際には必ずTBをお願い致します。ただし性暴力被害者が傷つく可能性があるものは、承認しない場合があります。

    プロフィール

    Author:てん
    メール:

    (※★→@で送信可)
    itisnot_yourfault★yahoo.co.jp


    性被害にあって十数年たちます。
    刑事裁判経験者です。

    二次被害三次被害等、過酷な経験をし、性被害の後遺症もところどころありますが、それでも、わたしは生きています。今は、生きていてよかったと思います。

    だから、同じ被害にあったあなたたちに伝えたい。
    あなたは何も悪くない。どんな事情があったにしろ、あなたは悪くないのです。どんな特殊性があったにしろ、望みを捨てないでほしいのです。

    悪いのは加害者であり、無理解な社会です。あなたは、何も変わってなどいない。とても素敵なところをいっぱいもっている、素敵な人のままなのだから。


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